石膏を支持体にしてサイアノタイプで感光後、水洗して定着に過酸化水素水を使い定着した。乾燥させしばらく窓辺に置くとコントラストが消え画像は全て青くなった。なぜか

 

直接の回答
  • 主なポイント:
    • 研究では、石膏のアルカリ性や不十分な水洗が原因で、画像が全て青くなる可能性があると示唆されています。
    • 過酸化水素水を定着に使用したことが、化学物質の残留を招いた可能性があります。
    • 光への再曝露が、未感光部の反応を促進した可能性があります。
なぜコントラストが消え、画像が全て青くなったか
石膏を支持体にしたサイアノタイプで、感光後、水洗し、過酸化水素水で定着した後、乾燥させて窓辺に置くと、コントラストが消え、画像が全て青くなった理由は、いくつかの要因が絡み合っていると考えられます。
水洗の不十分さ:
サイアノタイプでは、感光後に十分な水洗が必要です。不十分な洗浄により、未感光部の化学物質(鉄塩)が残留し、これが後から光にさらされると感光部と同様に反応し、プリシアンブルー(青い色)を生成します。これにより、元々白い部分も青くなり、コントラストが失われます。
過酸化水素水の使用:
過酸化水素水は、サイアノタイプのプロセスで画像を強化するために短時間使用されることがありますが、定着剤として使用するのは標準的ではありません。過酸化水素水を定着に使用した場合、未感光部の化学物質が完全に除去されず、残留した化学物質が光にさらされることで反応し、画像全体が青くなる可能性があります。
石膏の性質:
石膏は軽度にアルカリ性で、サイアノタイプのプリシアンブルーはアルカリ環境に弱いです。これにより、光や湿気にさらされると画像が変化しやすく、退色や変色が起こる可能性があります。
光への再曝露:
窓辺に置いたことで、再度UV光にさらされ、残留した化学物質が反応を起こし、画像全体が青くなった可能性があります。
これらの要因が複合的に影響を与えた結果、コントラストが消え、画像が全て青くなったと考えられます。 
 
詳細な調査ノート
この現象を詳細に調査し、サイアノタイプのプロセスと石膏支持体の特性を考慮した結果、以下の詳細な分析を行いました。サイアノタイプは1842年にサー・ジョン・ハーシェルによって発明された歴史的な写真術で、鉄塩(ferric ammonium citrateとpotassium ferricyanide)を使用してUV光に感光し、プリシアンブルー(ferric ferrocyanide)を生成します。通常、感光後、水洗で未感光部の化学物質を除去し、画像を固定します。ユーザーのケースでは、石膏を支持体とし、過酸化水素水を定着に使用した後、乾燥させて窓辺に置いたところ、コントラストが消え、画像が全て青くなった現象が観察されました。
プロセスと観察の詳細
ユーザーの説明によると、以下の手順が取られました:
  • 石膏にサイアノタイプ溶液を塗布し、UV光で感光。
  • 感光後、水洗を実施。
  • 過酸化水素水を使用して定着。
  • 乾燥後、窓辺に置くとコントラストが消え、画像が全て青くなった。
この現象を説明するため、以下の要因を検討しました。
1. 水洗の不十分さ
サイアノタイプの標準的なプロセスでは、感光後に十分な水洗(通常20分以上)が必要です。これは、未感光部の化学物質(ferric ammonium citrateとpotassium ferricyanide)を完全に除去するためです。もし水洗が不十分だと、これらの化学物質が支持体に残留します。残留した化学物質は、後から光にさらされると感光部と同様に反応し、プリシアンブルーを生成します。これにより、元々白い部分(未感光部)も青くなり、コントラストが失われます。特に、石膏は多孔質で水分を吸収しやすいため、化学物質が完全に洗い流されなかった可能性が高いです。
例えば、Photrio.comのフォーラムでは、洗浄が不十分な場合、画像が24時間以内に退色する問題が報告されています。
2. 過酸化水素水の誤用
ユーザーは「定着に過酸化水素水を使い定着した」と述べていますが、サイアノタイプの標準プロセスでは、過酸化水素水は定着剤として使用されません。代わりに、National Science and Media MuseumのブログAlternativePhotography.comによると、過酸化水素水は水洗の過程で使用され、画像の酸化を促進し、青の深みを増すために短時間(約1分)使用されます。その後、再度水洗が必要です。ユーザーが過酸化水素水を定着剤として長時間使用した場合、未感光部の化学物質が完全に除去されず、残留した化学物質が光にさらされることで反応し、画像全体が青くなる可能性があります。
また、Science Companyのガイドでは、過酸化水素水を使用した後、20〜30分の水洗を推奨しており、これが省略された場合、問題が起こる可能性があります。
3. 石膏のアルカリ性と支持体の影響
石膏(gypsum)は、化学的には硫酸カルシウム半水和物(CaSO4·1/2H2O)で、水と混ぜると石膏(CaSO4·2H2O)となり、軽度にアルカリ性(pH約7〜8)です。一方、サイアノタイプのプリシアンブルーはアルカリ環境に弱く、Conservation-Wikiによると、アルカリ(pH 9.4以上)による加水分解で退色や変色が起こる可能性があります。特に湿気や光にさらされると、この影響が顕著になります。石膏の多孔質な性質も、化学物質の残留や反応を促進する可能性があります。
Photrio.comのフォーラムでは、石膏やプラスターにサイアノタイプを適用する場合、アルカリ性による黄変や退色の問題が報告されており、ユーザーの観察と一致します。
4. 光への再曝露
ユーザーは乾燥後、画像を窓辺に置いたと述べています。サイアノタイプはUV光に敏感で、Nelly Duffのウェブサイトによると、強い光にさらされると退色する可能性があります。ただし、ユーザーの場合、退色ではなく「画像が全て青くなった」ため、単なる退色ではなく、残留化学物質が光によってさらに反応した可能性が高いです。具体的には、未感光部の鉄塩が光にさらされ、遅延的にプリシアンブルーを生成したと考えられます。
AlternativePhotography.comでは、サイアノタイプが暗所で保存すれば退色が回復する可能性があると述べていますが、ユーザーの場合、光への再曝露が問題を悪化させたようです。
詳細な分析と表
以下の表は、観察された現象とその原因、および関連する情報をまとめます。
現象
考えられる原因
詳細
コントラストが消える
不十分な水洗
未感光部の化学物質が残留し、光で反応して青くなる。
画像が全て青くなる
過酸化水素水の誤用
定着剤として使用し、未感光部を完全に除去できなかった可能性。

石膏のアルカリ性
アルカリ環境でプリシアンブルーが不安定になり、光で変化。

光への再曝露
窓辺でUV光にさらされ、残留化学物質が反応。
結論と推奨事項
以上の分析から、ユーザーの現象は以下の要因が複合的に影響を与えた結果と考えられます:
  • 不十分な水洗による未感光部の化学物質残留。
  • 過酸化水素水を定着剤として使用したことによるプロセスミス。
  • 石膏のアルカリ性による画像の不安定性。
  • 窓辺での光への再曝露による反応の進行。
今後、同様の問題を防ぐためには、以下の点に注意が必要です:
  • 感光後の水洗を十分に行い(20分以上推奨)、未感光部の化学物質を完全に除去する。
  • 過酸化水素水は定着ではなく、画像強化のために短時間使用し、その後再度水洗する。
  • 石膏支持体を使用する場合、アルカリ性を中和するためにアクリルゲッソなどのコーティングを検討する。
  • 完成した画像は光から保護し、暗所で保存する。
これらの情報は、Photrio.comConservation-WikiAlternativePhotography.comなどの信頼できるソースに基づいています。

 

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