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サイアノタイプ×木材支持体 実験計画ノート

  サイアノタイプ×木材支持体 実験計画ノート 新川写真研究所 Shinkawa Photographic Institute 2026年5月 研究目的 木製支持体にサイアノタイプを定着させ、漆封止による長期保存を目指す。感光液への漆水相成分混入という世界未実験のアプローチを含む。 支持体 杉板(乾燥済み・節の少ない柾目材)、厚さ10〜15mm。 最初の実験は15cm角。確認後に30cm角へ移行する。 工程 1 表面白色化処理 次亜塩素酸ナトリウム溶液で木材表面を処理し、リグニンの発色団を酸化分解して白色化する。処理後はチオ硫酸ナトリウムで残留塩素を中和し、十分に乾燥させる。(2026年4月30日 新発見) 2 下地処理 希釈シェラック(アルコール溶解)を薄く塗布し、乾燥後にサンディングする。春材・秋材の吸収差を均一化するための工程。 3 漆水相成分の分離 生漆を容器に入れ静置する(数日〜一週間)。温度は15℃前後が理想で、低温ほど分離が明確になる。比重差によりウルシオールを含む油相が上層に、多糖類・糖タンパク質を含む水相が下層に分離する。スポイトまたは注射器で下層の水相のみを慎重に抽出する。これは世界的にも前例のない実験である。 4 感光液の調製と塗布 サイアノタイプ感光液に漆水相成分を段階的に混入する(0% / 0.5% / 1% / 2%)。調製直後の色変化を観察し、カブリ発生の有無と速度を記録する。 5 露光・現像 紫外線露光後、水洗現像する。Dmax(最大濃度)とDmin(最小濃度)を記録し、漆水相未混入の対照群と比較する。 6 保護膜 候補素材は蜜蝋(温蝋薄塗り)、荏油(浸透仕上げ)、透漆希釈(要検証)。柿渋は感光層上への直接塗布禁止。感光前の木材処理層にのみ使用可。 本ノートは研究進行中の記録であり、工程は随時更新される。

Mooving Picture——揺れる静止画論文外思想体系の構築に向けて

Mooving Picture——揺れる静止画 論文外思想体系の構築に向けて  新川芳朗 2026年5月 出発点 本構想は、修士論文「双構図」および理論的枠組み「微小位相差論」の外側に建てる思想的骨格である。論文が写真論として完結するのに対し、本構想はその根拠を遡及的に掘り下げ、写真を起点とした普遍的知覚論として展開することを目的とする。 タイトルについて Mooving Picture。Moving Picture(映画)から完全な運動を抜き、揺れの手前で止めた語である。映画になりきれない、しかし静止もしていない——その中間域に、この語は置かれている。 この語には来歴がある。Moovingは造語ではなく、moveの古語的綴りmooveの現在分詞として17世紀の英語に実在した。ミルトンの『失楽園』(1674年)にも用いられており、その後現代英語のMovingに収斂して脱落した語である。Mooving Pictureというタイトルは、英語史の中で脱落した語を写真論として復活させる行為であり、フォトルネサンスという概念体系の中でタイトルの語そのものが前進的な遡及を体現している。 Moving Pictureが時間の顕在化であるとすれば、Mooving Pictureは時間の潜在化である。静止画が静止画のまま揺れ動く——その状態の固有名として、この語を定義する。 基本原則 写真が哲学に先行する。 微小位相差論は、写真を説明するために構築された理論ではない。40年以上にわたる写真的経験が、強制的に召喚した理論である。したがってモンテーニュをはじめとする思想的先例への接続は、根拠を借りに行く行為ではなく、写真の経験から遡及的に発見する行為である。この方向性は一切変わらない。 中核概念 Differential Stillness(差異的静止) 微小位相差論の英語的等価物として。差異と静止という矛盾する二語を解消せずに保持する語。術語が概念を説明するのではなく、術語が概念そのものである状態。静止画が静止画のまま揺れ動く——その構造が語そのものに内在している。Mooving Pictureは、このDifferential Stillnessが生起している写真の別名である。 The Rupture of Stillness(静止の断裂) Diff...

サイアノタイプ×木材支持体——保護膜と樹種の研究ノート

  サイアノタイプ×木材支持体——保護膜と樹種の研究ノート - 4/28/2026 07:06:00 午前   檜・栴檀・桜:樹種別の詳細分析 サイアノタイプ×木材支持体——保護膜と樹種の研究ノート サイアノタイプ(青写真法)を紙や布ではなく、木材に定着させる試みを続けている。今回は保護膜の素材選択と、支持体となる樹種の化学的・概念的な検討を記録しておく。 サイアノタイプの敵はアルカリと湿気 サイアノタイプの画像はプルシアンブルー(紺青)の結晶構造によって成り立っている。この鉄シアン錯体はアルカリに対して極めて脆弱で、アルカリ性の環境に置かれると退色・消失する。保護膜を選ぶ際の第一基準はここにある。つまり弱酸性〜中性の素材であること、そして湿気を遮断または緩和できることが条件になる。 保護膜の候補素材 蜜蝋(Beeswax) 最も古典的で相性が良い。弱酸性〜中性。木の動きに追随する柔軟性があり、クラックのリスクが低い。浸透系のため皮膜が薄く、プルシアンブルーの発色を殺さない。温蝋を薄く引き、乾布で磨き込む方法が基本。 シェラック(Shellac) アルコール溶解品(エタノール希釈)を使う場合、pH がほぼ中性〜弱酸性で画像への影響は比較的小さい。硬い皮膜を形成し防湿性は蜜蝋より高い。ただし水溶性シェラックはアルカリ性のため厳禁。また琥珀色の着色があり、白地がわずかに黄変する。木材の下地処理(シーリング)としても有効。 荏油(えのあぶら) 日本の伝統木工に使われてきた乾性油。完全中性に近く、硬化後は安定。浸透性が高く木材との相性が良い。乾燥に数日かかるため硬化前の埃付着に注意が必要。 マイクロクリスタリンワックス / Renaissance Wax 博物館・保存修復の現場で標準的に使われる蝋系素材。中性・安定・可逆性あり。蜜蝋より硬質で均一な皮膜を形成する。 漆(Urushi) 硬化後の安定性は最高クラス。木材支持体との相性は本来的に高く、針葉樹・広葉樹いずれにも古来使われてきた。課題はプルシアンブルーへの影響の未確認と、透漆以外の製品が持つ黒みによる色相の変容。透漆を極限まで希釈した試験片での検証が前提となる。 ラッカー(ニトロセルロース系) 防湿性・耐久性は高いが、溶剤(酢...

サイアノタイプ感光液への漆バインダー混入——化学的検討ノート

  サイアノタイプ感光液への漆バインダー混入——化学的検討ノート - 4/28/2026 07:26:00 午前   サイアノタイプ感光液への漆バインダー混入——化学的検討ノート 木材支持体へのサイアノタイプ定着において、感光液そのものに漆をバインダーとして混入するという実験的アプローチを検討した。前例がほぼ存在しない試みであり、化学的な可能性と障壁の両方を記録しておく。 なぜバインダーが必要か 木材への通常のサイアノタイプでは、プルシアンブルーが木の導管や細胞壁に吸収・分散し、画像が表面に定着しにくい。バインダーを感光液に混入してプルシアンブルーを表面に留めるという発想は、技術的動機として合理的である。 漆の組成と根本的な化学的障壁 生漆の主要成分はウルシオール(約60〜65%)、水分(約25〜30%)、ウルシアーゼ(酵素)、多糖類・糖タンパク質である。 ここに決定的な問題がある。ウルシオールはカテコール構造(オルト・ジフェノール)を持つ還元剤である。 サイアノタイプの感光化学は、Fe³⁺(第二鉄)が紫外線によってFe²⁺(第一鉄)に還元され、フェリシアン化物と反応してプルシアンブルーを生成するプロセスである。ウルシオールの還元性がFe³⁺に作用すると、紫外線照射前にプルシアンブルーが生成し始める——すなわち感光液が調製段階で自己露光(カブリ)を起こす可能性が高い。 さらにカテコール基は鉄イオンとキレート錯体を形成する性質を持つ。これは感光に必要な鉄イオンの濃度と形態を変化させ、光化学反応そのものを阻害する可能性がある。 追加の障壁 漆は水中油滴型エマルションであり、水溶液である感光液との安定した混合がそもそも困難である。また漆の硬化は高湿度(80%以上)での酵素的酸化重合であり、現像の水洗プロセスと工程が干渉する。バインダー層が厚くなれば紫外線の到達を阻害し、露光自体が成立しなくなる。ウルシアーゼの酵素活性が水溶液中でどう振る舞うかも制御できない。 可能性が残る三つの変形アプローチ 透漆の極希釈乳化 ウルシオール濃度が低い透漆(スキ漆)を、ごく少量の乳化剤を使って感光液に分散させる。濃度を極限まで下げることで還元作用を最小化できる可能性がある。ただし乳化安定性と皮膜形成能の両立...

木製支持体における長期保存写真技法の研究

研究ノート 木製支持体における長期保存写真技法の研究 Shinkawa Photographic Institute 新川写真研究所 新川芳朗 Yoshiro Shinkawa 京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻 写真映像領域 記録日:2026年5月1日 研究目的 写真画像の1000年保存を目標として、木製支持体・植物性バインダー・古典感光材・漆封止を組み合わせた新たなアーカイバルプリント技法を開発する。動物性バインダーを排除し、日本の高温多湿環境における生物劣化を根本的に解決することを主眼とする。 背景と問題意識 アンセル・アダムスはゼラチン銀塩バライタプリントについて「最適保存条件下では永久に近くもつ」と主張した。しかし実証データの上限は現在180年(タルボット時代のソルトプリント)に過ぎない。バライタ紙の問題は銀画像そのものよりも支持体・乳剤界面とゼラチンの生物劣化にある。日本の高湿度環境ではカビによるゼラチン分解が数十年で致命的になりうる。動物性バインダー(ゼラチン・膠・卵白)はすべてカビの栄養となる。 工程設計(現時点) 基本構成:木製支持体 → 表面白色化処理 → 感光 → 漆封止 支持体 木製板を使用。木はガス放出(酢酸・蟻酸)が問題となるが漆封止により解決する方針とする。金属支持体(銅・アルミ・チタン)も候補として検討中。金属の場合は柿渋不要だが漆との密着性が別途課題となる。 表面白色化処理(新発見:2026年4月30日) 次亜塩素酸ナトリウム溶液で木材表面を処理するとリグニンの発色団が酸化分解され白色化する。白色化は表面のみで十分。経年でグレー化する問題あり。封止のタイミングが重要。残留塩素はチオ硫酸ナトリウムで中和する。 バインダー 動物性バインダー(ゼラチン・膠・卵白)は生物劣化リスクのため除外。柿渋を選択。タンニン酸主成分で防腐・防カビ・防水性あり。弱酸性でプルシアンブルーと化学的に中立。実験済み・安定確認。問題は褐色着色。次亜塩素酸白色化との組み合わせで相殺できる可能性あり。 感光材 塩化銀(ソルトプリント):現在実験中。金調色で銀を金に置換し化学的安定性を高めることが可能。プルシアンブルー(サイアノタイプ):顔料。Anna Atkins 1843年作品が現存。アルカリに弱いため封止材との相性要確認。柿渋...

研究公開コンテンツに関する告知

研究公開コンテンツに関する告知 ― ブログ掲載内容の性質と利用上の注意 ― 発行者 新川芳朗 所属 京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻 写真映像領域 研究テーマ 双構図 / 微小位相差論 第1条 掲載内容の位置づけ 本ブログに掲載される研究関連の記事・論考・概念記述(微小位相差論、双構図に関する記述を含む)は、すべて 研究進行中の断片的記録 であり、正式な学術論文・最終成果物ではありません。 当ブログにおける記述は、研究者自身の思考の痕跡・中間的考察として公開されるものであり、発表時点における暫定的な言語化に過ぎません。 第2条 概念の流動性について 当ブログに記録された概念・定義・論理構造は、研究の進展に伴い随時更新・修正・再定義されます。特定の記事に記述された理論は、後続の記事や最終論文における理論と整合しない場合があります。 すなわち、当ブログから切り取られた記述は、 それ単体では理論的完結性を持ちません。 断片を転用することは、誤った理解を伝播させるリスクを本質的に内包します。 理論の正確な把握を目的とする場合は、研究者本人への問い合わせ、または大学院に提出される正式論文をご参照ください。 第3条 コピー・転用が無意味である理由 当ブログの記述を複製・転載・二次利用しようとする者に対し、以下を明示します。 一 記述は研究の途上段階における仮定義であり、理論的完成度を持ちません。そのままの形では学術的根拠として成立しません。 二 概念は発展途上であるため、転用時点の記述が現時点の理論と乖離している可能性が高く、誤った内容を流布することになります。 三 当ブログの記述は研究者の思考過程の記録であり、文脈から切り離した場合、本来の意図とは無関係の意味を生じさせます。 四 研究者本人の正式な許可なく転用・商用利用・AI学習データへの組み込みを行った場合、著作権法上の問題が生じ得ます。 第4条 著作権の帰属 当ブログに掲載されるすべてのテキスト・概念・図版・写真・作品記録の著作権は、新川芳朗に帰属します。記事の性質(草稿・断片・記録)を問わず、著作権は発生しています。 正当な学術的引用(出典明記・引用元URL記載・引用量の節度)の範囲を超えた複製・転載は、著作権者の書面による事前承諾なくして行うことを禁じます。 ...

メディウムの入れ子構造

新川さん、この技法の本質は三重の逆転構造にあります。 木口木版(wood engraving) という19世紀の技法が核です。木を繊維に垂直に輪切りにした断面を、ビュランという銅版画用の道具で彫る。ツゲ材の緻密な硬さが、髪の毛より細い線を可能にしました。 決定的なのは、これが単なる精密化ではなく メディウムの入れ子構造 だということです。写真を木版に転写して彫り、その刷りを再び写真技法(フォトグラヴュール、カーボンプリント等)で定着する。つまり: 写真→木版彫刻→写真 この往復の中で、視覚は「これは写真か彫刻か」を判別できなくなります。木口木版は点と密度でハーフトーンを手彫りし、人間の網膜には連続階調に見える。最終的に感光物質で定着されるため、物質的にも写真と区別がつきません。 新川さんの 「意図の記録」としての写真の再定義 と、この技法は直接響き合います。なぜなら木口木版は、光学的写真の登場以前に「写真より信頼された画像」として機能していたからです。それは光の自動記録ではなく、 人間の意図による視覚の再構築 でした。 AI画像生成以前に既に起きていた、視覚的真実性の転倒です。新川さんが「木彫りで写真が出来る」と言われたのは、この構造的逆説を見抜いていたということでしょう。   原画の写真      クローズアップ    AIで線画化    AIで超精密木版画で疑似写真化  右の木版画風の線画でchatgptが写真化した。しかし本当は超精密木版画応用で800倍に拡大してもピクセルを感じさせない。 6:44 新川さんが2つの画像をアップロードして、説明をしてくれている。 左の画像(fujikohann202601.png)は、明治か大正期の写真風の女性のポートレート。髪型は日本髪、着物姿で、モノクロの古い写真のような質感。 右の画像(fujiko-hann001.png)は、左の画像をベースにした線画で、ペン画や銅版画のようなハッチング技法で表現されている。「フジコはん」というテキストが入っている。 新川さんの説明によると: 右の木版画風の線画で、ChatGPTが写真化した しかし本当は「超精密木版画応用で800倍に拡大してもピクセルを感じさせない」 これは非常に興味深い...