テンペラ画法の耐侯性

 

テンペラ画法(卵黄や膠などをバインダーとして用いる技法)は、非常に耐久性が高いことで知られています。特に、適切な環境下で保存された場合、テンペラ絵画は数百年以上、場合によっては1000年を超える耐候年数を誇ります。以下に詳細をまとめます:
  1. 耐候年数の目安
    • 中世ヨーロッパのテンペラ画(例:ジョットやフラ・アンジェリコの作品)は、13~15世紀に制作されたものが現在も鮮やかな色彩を保っています。これらは約600~800年以上経過しても劣化が少ない例です。
    • イコン画(東方正教会の宗教画)では、6~7世紀のテンペラ画が現存し、1000年以上の耐久性を示しています。
    • ただし、耐候年数は保存環境(湿度、温度、光曝露)に大きく依存します。
  2. 耐久性の理由
    • 卵黄の化学的安定性:テンペラのバインダーである卵黄は、乾燥後に硬化し、湿気や酸化に対して強い保護層を形成します。
    • 顔料の選択:伝統的なテンペラ画では、鉱物顔料(例:ウルトラマリン、アズライト、辰砂)など、化学的に安定な天然顔料が使用されるため、退色しにくいです。
    • 支持体の影響:木製パネルや石膏下地(ジェッソ)を使用することで、物理的な安定性も向上します。
  3. 環境による影響
    • 直射日光や高湿度は、テンペラ画の劣化を早めます。特に紫外線は顔料の退色やバインダーの劣化を引き起こす可能性があります。
    • 適切な保存環境(温度18~22℃、相対湿度50~60%、低照度)では、テンペラ画はほぼ永久的に近い状態で保存可能です。
    • 屋外や過酷な環境では、耐候年数は大幅に短縮され、数十~百年程度となる場合もあります。
  4. 現代のテンペラ画
    • 現代のテンペラ画でも、伝統的な材料と技法を用いれば同様の耐久性が期待できます。ただし、合成顔料や低品質なバインダーを使用すると、耐候年数が短くなる可能性があります。
結論: テンペラ画法の耐候年数は、適切な材料と保存環境下で数百~1000年以上に及びます。ただし、屋外や劣悪な環境では劣化が早まるため、具体的な年数は条件次第です。博物館や教会に残る中世のテンペラ画がその耐久性の証です。

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