支持体編 素焼きの陶器と磁器と石膏の膨張率
素焼きの陶器と磁器と石膏の膨張率
素焼きの陶器、磁器、石膏の熱膨張率(線膨張係数)は素材の組成や焼成条件によって異なりますが、以下に一般的な値をまとめます。
1. 素焼きの陶器の熱膨張率
- 一般的な範囲: 約 5.0~7.0 × 10⁻⁶ /K(20~700℃の範囲)。
- 特徴: 素焼き陶器は粘土を低温(約800~1100℃)で焼成したもので、焼成温度や粘土の種類(例: 赤土、テラコッタ用粘土)により膨張率が変動。磁器より多孔質で吸水性が高く、熱膨張率は磁器と同程度かやや高い場合がある。
- 備考: 素焼きは未釉薬の状態が多く、焼成後の収縮率(約8~12%)も考慮が必要。
2. 磁器の熱膨張率
- 一般的な範囲: 約 5.5~6.5 × 10⁻⁶ /K(20~700℃の範囲)。
- 特徴: 磁器は高温焼成(約1200~1400℃)により緻密で硬い構造を持ち、熱膨張率は比較的低い。長石やカオリンの比率で変動し、長石量が多いと膨張率が小さくなる。耐熱磁器(例: ペタライト系)はさらに低膨張(約5.0 × 10⁻⁶ /K)。
- 備考: 釉薬との膨張率適合が重要で、貫入や割れ防止に考慮される。
3. 石膏の熱膨張率
- 一般的な範囲: 約 34.7 × 10⁻⁶ /K(20~100℃の範囲)。
- 凝結膨張率: 陶磁器成形用石膏では硬化時の凝結膨張が重要で、低膨張タイプで 0.03~0.13%、高膨張タイプで 0.5% 程度。
- 特徴: 石膏は磁器や陶器に比べ熱膨張率が5~6倍大きく、加熱時の膨張が顕著。陶磁器の型材として使われるが、650℃付近で熱膨張率が 1.5% に達する埋没材もある。
- 備考: 低膨張石膏(例: HS-700)は原型用に設計され、膨張を抑える。
比較表
素材 | 熱膨張率 (×10⁻⁶ /K) | 特徴 |
---|---|---|
素焼き陶器 | 5.0~7.0 | 多孔質、吸水性高、粘土次第で変動 |
磁器 | 5.5~6.5 | 緻密、硬い、低膨張、釉薬適合が重要 |
石膏 | 34.7 | 高膨張、型材用、凝結膨張も考慮 |
留意点
- 陶器と磁器の差: 素焼き陶器と磁器の熱膨張率は近いが、陶器は焼成温度が低く多孔質なため、収縮や釉薬との適合性が磁器より不安定。
- 石膏との差: 石膏の熱膨張率は陶器・磁器の5~6倍大きく、成形時の型と素地の膨張差が応力や変形を引き起こす可能性がある。
- 製造での考慮: 石膏型は泥漿の水分吸収に使用されるが、熱膨張率の違いにより、焼成後の収縮(陶器: 8~12%、磁器: 10~15%)や釉薬のクラック(貫入)に影響。低膨張石膏や適切な焼成スケジュールで対応。
結論
- 素焼き陶器: 5.0~7.0 × 10⁻⁶ /K
- 磁器: 5.5~6.5 × 10⁻⁶ /K
- 石膏: 34.7 × 10⁻⁶ /K
陶磁器製造では、素焼き陶器と磁器は熱膨張率が近いが、石膏は大きく異なるため、型設計や焼成条件の調整が重要です。具体的な用途(例: テラコッタタイル、精密磁器)に応じて、適切な素材選定と低膨張石膏の使用を検討してください。
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